執筆記

ウィキペディア利用者:逃亡者です。基本的にウィキペディア執筆に関しての日記です。そのうち気まぐれで関係ないことも書くかもしれません。

勝手に棚から一掴み (1) 『黄色い虫』

1月23日のイベントで期せずして「逃亡者さんのおすすめの本をもっと知りたい」といわれ、「ではいずれブログで」と安易に引き受けてしまいました。

独断と偏見と私見と私情に満ちたおすすめ本でよろしければ、勝手に紹介記事の連載を始めてみたいと思います。まずはこちら

www.shogakukan.co.jp

「虫」と聞いただけで嫌悪感をおぼえる方もいらっしゃると聞きますが、お待ちください。船山馨さんと船山春子さんのご夫妻を紹介した本です。

「船山馨? 船山春子? それ誰?」と声が聞こえてきそうです。

あの太宰治朝日新聞に小説を連載中に自殺し、その後釜で急遽連載を開始したのが船山馨さん、その苦難を陰から支えたのが奥さんの船山春子さんです。太宰治といえば知らない人はいない……とまではいいませんが、これでざっくりとおわかりいただけるでしょうか。

 

戦後間もない1948年、朝日新聞に『グッド・バイ』を連載中であった太宰が入水自殺。その後に船山馨が連載を始めたものの、本来なら半年以上先で準備不足も甚だしい。その苦難を乗り越えるため、船山は「ヒロポン」に手を出しました。 

夫がヒロポンに溺れる傍ら、奥さんの春子さんはどうしたか?

なんと自分自身もヒロポンを始めました。

一説では、夫の苦しみを自分の苦しみとして捉えて、夫妻で共に苦しみを分かち合いたいと願ったと言われています。

夫と妻が同時にヒロポン中毒。

2人だけではなく当時、子供が2人いました。

両親共にヒロポン中毒になる家庭は、書籍の題にある通りまさに「壮絶」でした。

 

そして23日のイベントのフリートーク中に「その人の死に様が印象的で、劇的な死に方をした人物に惹かれて、記事を書くことがある」と申しましたが、船山春子さんの最期も実に劇的でした。

これ以上はネタバレ極まりませんので、ぜひ本をお読みいただき、その目で確かめていただきたく思います。

NHK朝ドラにならないかなぁと思うのですが、やはり薬物中毒などまつわると難しいでしょうか……

 

※ :「ヒロポン」。今でこそ薬効分類名はれっきとした「覚醒剤」ですが、当時はそこいらの薬局でごく普通に売られていました。何せ、国民的漫画『サザエさん』の作者である長谷川町子先生の作品『似たもの一家』でヒロポンが登場するほどです。よくサラリーマンが栄養ドリンクを飲んで多忙さを乗り切っていますが(僕も大いに記憶があります)、それと同じ感覚で、人々はヒロポンで多忙さを乗り切ることが、一種の流行となっていたのです。